【私の指導哲学】サッカー部 桂 秀樹監督「サッカーをより深く、楽しんでもらえるような環境を提供したい」

2022年12月24日、翌年からのJ2昇格を決めていた東北のいわきFCから、当時大学3年生だったDF辻岡佑真選手(4年、高松工芸高校出身)の、2024年度からのチーム加入と2023年度のJリーグ特別指定選手(大学に在籍しながら、Jリーグ公式戦に出場できる制度)への登録が発表されました。
辻岡選手は、2023年中にリーグ戦7試合に出場(スタメン2試合)し、いわきFCのJ2初年度のリーグ残留に貢献しました。続いて2023年5月15日には、J2のレノファ山口からMF水口飛呂選手(4年、履正社高校出身)の2024シーズン新加入内定と、2023年度特別指定選手承認の知らせが届きました。
水口選手もJ2リーグ戦4試合(スタメン1試合)に出場し、高いレベルの経験を積みました。大学から直接、J2以上のカテゴリーのチームに加入を決めたのは2人が、初めてでした。2008年からチームを率いる桂秀樹監督(53)の指導が、徐々に形となってきています。

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夢を叶えた選手から見た桂監督

IPU・環太平洋大学(在学中/現在4年生)​水口 飛呂選手

水口選手 人間観察が好きな監督で、すごく選手を見てもらえているのを感じましたし、的確な時に、的確なアドバイスをいただけました。例えば、ボールを蹴る時に足を振り上げ過ぎず、トラップしてすぐに、インサイドでもアウトサイドでもパスを出せるようにして、「そこをお前のサッカー人生、サッカー選手としての生命線にしろ」などとご指導頂いたりしました。また、「ここで、こうパスを出せたら、世界も変わる」と言われて、実際にプレーを見せてもらって、練習試合、紅白戦や自主練で繰り返し試すうちに、本当に世界が変わりました。僕は中学・高校の6年間、1度も公式戦に出してもらえたことはありませんでしたが、大学3年の時にトップチームに昇格して、『俺にもワンチャン、プロのチャンスがあるかも』と思い出し、約1年後に(J2山口と)契約できました。入学した時は『中学・高校で全く試合に出ていなかった選手が、プロになれるわけがない。大学では楽しんでサッカーをしよう』と思っていましたが、監督との出会いで、人生が大きく変わりました。

桂監督の持つプレースタイルや現役時代について

IPU・環太平洋大学 サッカー部 桂 秀樹監督

桂監督は、Jリーグが開幕した前年の1992年に、横浜フリューゲルス(現横浜Fマリノス)に入団しました。身長160㌢弱と小柄ながら、サイドからゴール前に切れ込むドリブルや、豊富な運動量を生かした前線からのプレスで、草創期のJリーグを沸かせました。1997年には当時JFLだった川崎フロンターレに移籍し、初代J2優勝、そしてJ1への昇格に貢献。国内屈指の強豪クラブに成長する礎を築いています。現在のおっとりした物腰の柔らかい姿からは想像しづらいですが、ピッチでは闘争心を剥き出しにしてボールを追う選手でした。

桂監督 自分のプレーを分析するのは難しいですが、クレバーにプレーしていたかもしれません。体が小さい分、技術力と頭を使ってプレーをしないと、日本のトップでは通用しないと考えていました。(そうしたプレーを)心がけていたというよりは、必要性に迫られて、自然と身につけていったんじゃないかなとは思います。

JFLの佐川急便東京SCで引退した後は、サガン鳥栖でトップチームのコーチやUー18の監督・コーチとして経験を積み、環太平洋大学のサッカー部監督に就任しました。総理大臣杯出場権を争う中国大学サッカー選手権では5連覇を含む8回優勝。全日本大学サッカー選手権(インカレ)出場を目指す中国大学サッカーリーグ1部でも5年連続を含む7度の優勝を成し遂げています。2023年は中国大学サッカー新人戦を制しており、翌年以降のチームにも大きな期待が寄せられています。

桂監督 この大学に来てもらった選手には、サッカーをより深く、楽しんでもらえるような環境を提供したいと思っています。技術の部分や戦術的な部分はもちろんですが、相手の心理を読む・予測する、といった駆け引きの部分、チームに必要な心がけなど、社会に出ても役立つ原理原則を学んでほしいですね。もちろん、全国大会に出られるなら、そこで行けるところまで行ってほしい思いはあります。ただ、負けたら負けたで、出られなかったら出られなかったで、学生にとっては非常に良い学びになりますし、成長につながっていきます。高校まで全国大会出場の経験がない学生も多く在籍していますので、「在学中に1度は経験させてあげたい」という気持ちはあります。

現在サッカー部には毎年約250〜300人の選手が所属し、7つのカテゴリーに分かれて運営されています。桂監督は通常トップチームの担当ですが、不定期に行われる学内のリーグ戦にも足を運び、選手の入れ替えも行います。水口選手は入学当初、社会人リーグを舞台に戦うBチームの所属でしたし、2022年末のインカレで正ゴールキーパーを務めた阪本龍選手(現高知県警察)は、下から数えて2番目のチームから、いきなりトップに抜擢され、天皇杯でJリーグチームと対戦する経験もしました。

桂監督 学内リーグはできるだけ見ていますし、そこでアピールしてトップチームに定着した選手ももちろんいます。意識的に「プロサッカー選手を育てよう」とは思いませんが、(7つのチームの)どのカテゴリーにいたとしても、大学4年間のどこかで、競技人生の最大値を迎えて卒業させてあげたいと思います。それがプロにつながる可能性となるはずです。サッカーは、複雑性が1番高いスポーツだとも言われています。不確実性が高いですし、正解のないスポーツで、結果が運に左右されることもあります。ただ、それを如何に想定内とし、意図的にコントロールしようと出来るか。それがサッカーの楽しいところでも、難しいところでもあります。プレーヤーは、「周りの状況を見る」そこで「どう判断をして」「どう動くべきか」を瞬時に考えなければなりません。サッカーを続けていれば、今後の生活や社会で起こることに、十分活かせますし、対応できます。社会生活の中で必要な原理原則を、このサッカー部で学んでもらいたいですね。

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