関東・関西に負けないデータ分析で、チームを全国優勝へ導く!硬式野球部 アナライザー 髙橋諒さん

2022年10月8日。ライバル東亜大学とIPU・環太平洋大学との間で争われた秋季中国六大学リーグの一戦は、意外なほど大きな点差がつきました。日本代表候補にも選ばれた相手の快速右腕から、5安打ながら8四球を選んで5回までに5点を奪うと、その後も得点を重ねて10ー4で勝利。勢いに乗って翌日の同じカードを連勝できたことで、春夏連続のリーグ優勝が大きく近づきました。この試合の勝利に、大きく貢献したのがアナライザー(分析担当)の髙橋諒さんでした。

髙橋諒さん
体育学部体育学科3年
神戸市立須磨翔風高等学校出身
硬式野球部 アナライザー(分析担当)

東亜大学戦での連勝結果を髙橋さんは、「相手ピッチャーは、まっすぐ(ストレート)が速く、変化球もかなり鋭くキレますが、基本的にはスライダー(変化球)が主体。今までは、そのスライダーにうち(IPU)の打者が、あまり手を出さずにカウントを悪くするケースが多く、攻略の課題になっていました。その試合は、前日のミーティングで、メンバーに「もう一度自分の打席をおさらいしよう」と声をかけて過去のデータを見て、「明日の試合は変化球(スライダー)を打とう」ということになりました。その結果、試合ではスライダーをうまくバットに当ててファールで逃げながら相手投手を追い込み、フォアボールをもぎ取ったり、甘く入ったボールを弾き返したりして、得点を重ねてくれました。もちろんすべて〝データを使ってプレーしてもらえた〟ということではありませんが、他にも「ここは思った通りになった」というシーンが何度がありましたし、データがうまく活用できた試合の勝利はうれしいですね。」と振り返ります。

目次

大好きな野球に携わりたい一心で、学生コーチとしてIPU野球部へ入部

高校3年生の春、髙橋さんの所属した神戸市立須磨翔風高校野球部は、強豪ひしめく兵庫県大会を勝ち上がり、学校創設以来の決勝進出を果たしました。しかし、チームのスタメンに髙橋さんの名前はなく、ベンチにいることのほうが、圧倒的に多い選手でした。高校時代を「ベンチでも、裏方の仕事が多かったですね」と髙橋さんは苦笑いで振り返ります。それでも当時から「将来は体育の先生になりたい」という思いがあり、隣県の岡山県で教員採用試験に実績のあるIPUを進路先として選択。そして、大好きな野球に携わりたい一心で、学生コーチとして野球部の門を叩きました。1年後、アナライザーを務めていた先輩が卒業するとすぐ、その仕事を引き継ぎました。

アナライザーとして、日々データを分析し試合への準備を整える

春夏のリーグ戦や、その他実施される週末など、野球部のアナライザーを務める髙橋さんに休みはありません。
髙橋さんはアナライザーとして、多くの業務を行っています。

アナライザーとして、試合を記録しデータを分析する髙橋さん

髙橋さんの主な業務

  1. 自チームの試合も含め、同じ会場で行われる試合(リーグ戦なら3試合)すべてビデオカメラで録画する。
  2. 全試合終了後、宿舎に戻って夕食を食べたあと、IPU野球部の関係者だけが見られる設定にして、映像を動画サイトにアップする。
    ※映像は合計6〜8時間におよぶため、完全にアップし、監督・選手が見られる状態になるまで、少なくとも1〜2時間かかる。
  3. チーム、相手チームの打撃結果(打球方向、打ったカウントなど)や、投球内容(コース、球種など)を、1打席、1球ごとデータ解析ソフトに入力。翌日に試合がある場合は、試合開始前のミーティングまでにデータを出せるよう整える。

ここまでの業務を終えると、「深夜0時を過ぎて、日付が変わっていることがほとんど」と髙橋さんは言います。さらに、全体ミーティングが行われる火曜日もしくは水曜日までには、他の試合のデータも打ち込み、次の試合に向けての自チームの課題や、相手の攻略法を、キャプテンや各ポジションのリーダーがプレゼンテーションできるよう、データをそろえます。

アナライザーとして戦略面からチームを支え、4年ぶり6回目の神宮大会出場に貢献した

データを活用できず、雪辱を味わった経験を糧に次へつなげる

しかしそこまでしても、データ通りにはいかず、報われないこともあるのがアナリストです。昨年6月の全日本大学野球選手権の1回戦では、札幌学生野球連盟の東海大学札幌校と対戦。相手の左投手にノーヒットノーランを達成されるという屈辱を味わいました。

髙橋さん ゆるい変化球でカウントをかせいで、インコースにずどんとストレートが来るというデータが出ていて、実際の試合でもその通りのパターンでしたが、バッターボックスに入った選手に聞くと、「綺麗なストレートではなく、少し揺れて動くような、くせのあるボールで、対応しづらかった」ということでした。試合の前半は「打てないこともあるだろうな」と思って見ていましたが、まさかあんなノーヒットノーランの結果になるとは、という感じでした。でもそこから、どの選手にも〝データをうのみにするのではなく、データを参考にして、自分で対応策を考える〟という姿勢が出てきたように思います。相手チームの特徴もそうですが、打者なら打つのが苦手なボールや、投手なら打たれることが多いボールなど、自分のプレーの特徴を聞いて、修正したり改善するためにデータを活用する選手が、以前よりも増えた気がします。

アナライザーとして、〝全国優勝〟という目標を目指して

IPU野球部は、春に続いて秋のリーグ戦を制し、その後の広島六大学連盟・四国六大学連盟との中四国代表決定戦も勝ち抜き、4年ぶり6回目の神宮大会出場を決めました。1回戦で国際武道大学(千葉)を下し、続く2回戦では大阪商業大学(大阪)に延長10回で敗れましたが、いずれも強豪を相手に、互角の勝負を繰り広げました。アナライザーが提供するデータについてIPU硬式野球部の野村昭彦監督は「全てのデータを見ます。何打数何安打とか、どこに打ったのかなど、さまざまなデータが出てきますが、私はそのデータを〝なぜそれだけ打てたのか〟〝なぜそこに打てたのか〟という、深いところまで掘り下げます。それを知るための起点となるデータですので、あるのは非常に助かります。もちろん、最後は自分で選手を見て判断はしますが」と話します。

「選手状態を知るための起点となるデータですので、非常に助かります。」と
アナライザーのデータを評価する野村昭彦監督

IPU・環太平洋大学 硬式野球部 野村昭彦監督

佐伯鶴城(サエキカクジョウ)高校でエース・主将として3年夏の甲子園ベスト8。駒澤大学でも主将として活躍。日本石油(現 JX‐ENEOS)では、1991年日本選手権、第一回アマチュア王座決定戦、1993年・1995年都市対抗制覇に貢献。その後、日本石油、駒澤大学のコーチを歴任。駒澤大学コーチ時代に明治神宮野球大会優勝。2013年よりIPU硬式野球部監督に就任。2018年明治神宮野球大会準優勝。2018年2019年侍JAPAN大学日本代表コーチとして、ハーレム国際大会優勝、日米大学野球優勝。

髙橋さん アナライザーは、関東や関西の方が発達しているとは思いますが、負ける気はさらさらありません。4年前に、IPUが神宮大会で準優勝した時は、慶應義塾大学などに勝っていますし、今後もチームと同じ〝全国優勝〟という目標を持って、選手たちを全面的にサポートしたいですね。

2年間の硬式野球部でのアナライザー生活を経て、髙橋さんは進路の選択肢に「データ解析ソフトを開発する企業」を増やしました。

髙橋さん 野球の指導者や教員という道に進まなかった場合は、ソフトを開発する企業への就職もアリかなと感じています。東京で、プロ野球の10球団ぐらいが使用しているソフトの開発をしている企業のインターンシップを経験しましたが、そうしたソフトを、高校や大学など、まだ完全に根付いていない分野に広げていく仕事も、ちょっと面白いかなと思い始めています。

IPU野球部と、そのアナライザーの挑戦は、新シーズンも続いていきます。

資料請求

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次