【私の指導哲学】陸上競技部 豊里健コーチ 「競技力は“知”から成り」

環太平洋大学陸上競技部スタッフ陣のバックグラウンドや、指導方針を紹介する企画、「私の指導哲学」。今回は投てきブロックの豊里健コーチにご登場いただきます。環太平洋大学で指導する前は中学校、高校での教員を経験。技術を噛み砕き、表現力豊かに説明するコーチングは定評があります。投てきの面白さを知り、学び、そして好きになることが競技力向上につながると考え、日々の指導にあたっているそうです。

IPU・環太平洋大学 陸上競技部 豊里健コーチ

鹿屋体育大学大学院を修了。現役時代は砲丸投回転投法で日本IC優勝・日本選手権準優勝。指導者としては沖縄陸上競技協会強化部コーチとしてU-20日本代表や全国大会優勝・入賞者を輩出。2020年より本学陸上競技部投擲コーチに就任。現日本陸上競技連盟強化育成部投擲コーチ。

目次

こだわりを持ち、粘り強く取り組むことの大切さ

ー「競技力は“知”から成り」

学生時代、砲丸投で日本インカレを制し、日本選手権準優勝を果たすなど日本のトップ選手として活躍した豊里健コーチの座右の銘はタイトルにある、「競技力は“知”から成り」。これはコーチ自身が現役時代に考えついた言葉だ。

豊里コーチ 大学1年でグライド投法から回転投法へと転向しました。ただ周囲に回転投法の選手が少なく、自分で学び始めたことが最初のきっかけです。技術、トレーニングだけでなく、栄養学などまで興味の幅が出てきて、そこに取り組んだことで競技力が上がっていきました。また肩を痛め、一時は砲丸投での競技継続をあきらめかけた時もありましたが、理学療法士から“正しいアプローチで治療とリハビリをすれば必ず復帰できる”と言われ、実際にそうなりました。そこでも知識の重要性を感じました。

自身の経験で得た知識をもとに、学生を指導する豊里コーチ

ー ひとつのことにこだわりを持ち、取り組み続けた習得した技術が競技者としての芯の部分になる

知識を得て、競技と自分自身の体を探求してこそ、競技力は向上するという強い信念は指導者になった今も変わらず持ち続けている。同時に得た知識を行動へと移し、粘り強く取り組むことも重要だ。

豊里コーチ 私自身、回転投法ではスタート動作が肝心と考え、そこにこだわりを持って技術やフォームを習得していきました。もちろん他の局面の練習もしましたが、ひとつのことにこだわりを持ち、しつこく取り組み続けたことで習得した技術が競技者としての芯の部分になったと思います。それは今の学生にも伝えたいことのひとつです。

練習では量よりも質を求めるべき。しかし投てき種目はフィジカル強化、技術の習得など成果が表れるまでに時間がかかる競技だ。だからこそこだわりを持ち、追求する姿勢が重要だと豊里コーチは考えている。

日本GP山口大会・田島直人記念競技会で8位に入った本多秀選手
西日本インカレで7位に入った永井桃花選手
選手に寄り添う姿勢と丁寧なコミュニケーションを重視して指導を行う

奥が深く、追求できる 投てき競技の面白さを伝えたい

指導のスタイルは新約聖書にある言葉、”求めよさらば与えられん“が近い。物事を成就するためには、与えられるのを待つのではなく、みずから進んで求める姿勢が大切という意味だ。

豊里コーチ 考え、自分から行動を起こせる選手になって欲しいと考えています。そのうえで疑問が生まれたり、聞きに来れば、私の中にある引き出しをどんどん開けて学んでいけますし、自分から周りに考えを発信してこそ、選手自身の価値もあがるからです。

ー 選手に寄り添う姿勢と丁寧なコミュニケーションを重視して指導を行う

2020年4月に環太平洋大学に赴任する以前は沖縄県内の中学校、高校の教員として指導を行い、特に高校ではインターハイ、国体の優勝者、入賞者を出すなど、実績を挙げている。この間、大学生より若い世代を指導する中で、選手に寄り添う姿勢と丁寧なコミュニケーションのノウハウを身につけた。この部分は豊里コーチが環太平洋大学陸上部内の他の指導者から巧みさを評価されている点である。

豊里コーチ 高校生を指導している時、ランキング1位の選手を全国の舞台に連れていったことがありましたが、予選落ちし、そこから選手が競技に向かい姿勢がネガティブになってしまうことがありました。このとき、私は選手のことを信頼しきれない場面が多く、普段の練習での指導も、試合前のコーチングエリアでも技術のことばかり話していたと思います。しかしそれでは結果を残せないことに気がついたんです。私自身が指導の姿勢を改め、選手を信頼し、サポートすることに徹し、安心感を持って試合に送り出すことを第一に考えるようになりました。対話を重視するようになったこともあり、その選手は再度、全国で活躍できるようになったのですが、これは自分のこれまでのキャリアの中でも印象深い出来事でした。

選手とのコミュニケーションはポイントを噛み砕き、たとえ話を交えながら理解を促す。また技術面での指導をする際には擬音を使いながら、感覚で落とし込むことにも努めている。

技術面での指導をする際には擬音を使いながら、
感覚で落とし込むことにも努めている
選手とのコミュニケーションはポイントを噛み砕き、
たとえ話を交えながら理解を促す

ー 投てき競技の面白さをひとりでも多くの選手に伝えることこそが自分の使命

投てき競技の面白さはシンプルに”重いものを遠くに飛ばせる“ところにある。やりが自分の手から離れた瞬間に放物線を描き、また円盤が回転しながら、はるか遠くに落下していく。その面白さをひとりでも多くの選手に伝えることこそが自分の使命だ。そしてそれぞれの種目の動きに特性があり、フィジカルはもちろん、技術を突き詰めようとすれば、奥深さに際限がない。それを追求する面白さも伝えていきたいと考えている。

豊里コーチ 伸びる選手に必要な要素は競技を好きになることです。今、環太平洋大学にいる選手の中でもyoutubeやSNSでどんどん発信するほどに競技が好きな選手がいて、やはり力を伸ばしています。知れば知るほど、奥が深く、また楽しくなっていくのが投てきですので、しっかり学び、知識を得ながら楽しんで取り組んでほしいと思います。

「しっかり学び、知識を得ながら楽しんで投てき競技に取り組んでほしい。」と語る豊里コーチ

自己記録を越えた瞬間にはかならず喜びがある。それを選手と共有し、さらにその先にあるインカレでの表彰台、大学陸上界の世界的祭典、ユニバーシティゲームズへ代表選手を送り出したいという夢を描いている。

私の指導哲学シリーズ

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