環太平洋大学陸上競技部にはいろいろな夢を持って入学を決めた選手たちがいます。その夢とはどんなものなのか、そして入学後、どのようにそこに近づいているのでしょうか。砲丸投を専門とする泊瑶平選手がIPUへの進学を決めたのは豊里健投てきコーチとの出会いがきっかけでした。新たな技術を学び、世界を目指すという強い意志を持って、毎日の練習に励んでいます。
IPU・環太平洋大学 陸上競技部 泊瑶平
大阪府大阪高校出身、専門種目:砲丸投
回転投法を習得するためにIPUへ
2022年徳島インターハイ4位の実績を引っ提げてIPUに入学した泊瑶平。その理由は「もっと高いレベルを目指すために最適な指導者と環境だったから」とい極めてシンプルなものだった。
泊さん 「自分は高校までグライド投法でしたが、さらに記録を伸ばすには回転投法にチャレンジしないといけないと考えていました。そんな時、IPUの豊里健コーチに出会ったんです。豊里コーチは現役時代に回転投法でしたし、ここならば正しい指導を受けられると思い、入学を決めました」
グライド投法とは砲丸を投げる方向に背を向けた状態で準備動作に入り、勢いよく振り向いたときの加速と肩の動きを利用して砲丸を押し出す投げ方。一方で回転投法はグライド投法と同じように投げる方向に背を向けて準備するが、足の運びによって全身を回転させて遠心力をつけて、砲丸を押し出す。世界のトップクラスのほとんどが回転投法を選択しているが、回転動作が人間の生活に馴染みのない動きであるため、習得に時間がかかるといわれている。
泊さん 「回転投法をするならば早い方がいいと豊里コーチに言われ、高校の後半からドリルを教えてもらって挑戦を始めました。入学後も自分の感覚を尊重していただきながら、細かい指導をしてくださっています。今は覚えることばかりで、なかなか試合で実践できていませんが、自分なりに少しずつ進歩している手応えがあります」
フォームだけでなく、高校時代は6.00kgの砲丸での試合がほとんどだったが、シニアへとカテゴリーが上がり、それは7.260kgへと変わった。慣れなければならないことが多い中で、泊は入学直後から自己ベストを連発。中四国インカレ優勝、西日本インカレ2位と幸先のいい滑り出しを見せている。
泊さん 「IPUの投てきブロックは全種目の選手が集合し、練習するのが基本です。ストイックな選手が多く、全体練習が終わった後にも居残りで練習することが当たり前で、そこに衝撃を受けました。自分も納得するまで練習をやり尽くしたいタイプなので、その雰囲気がすごく自分に合っています」
砲丸投は直径2.135mのサークルの中での動作で最大のパワーを生み出し、砲丸に伝えなければならない非常に繊細な競技だ。「突き出す瞬間の感覚には自信がある」というが、始めたばかりの回転投法の技術を高めていくにはまだ時間がかかる。だが仲間とともに楽しみながらそれを突き詰めていけることに喜びを感じていると泊は嬉しそうに話す。回転投法を自分のものにするため、同じく回転動作で行う円盤投にも今後、本格的に挑戦していくつもりだ。
同世代のライバルを倒し、世界を目指す
回転投法の習得でさらなる高みを目指す泊だが、砲丸投は技術だけでなく、パワーも要求される種目。身体能力が記録に大きく影響するだけにウェイトトレーニングは練習の中でも重要な位置づけとなっている。
泊さん 「その点でTOPGUNの施設はこれ以上ないくらい気に入っています。スクワットラックやベンチプレスの数などトレーニング設備が充実していて、自分のやりたいトレーニングが待ち時間なくできるんです。ここを活用しきれれば、絶対に強くなれる確信があります。またバイクでのトレーニングなど高校時代にやってことのないものも取り組むようになりましたし、さまざまな測定で自分の体を客観的に知ることができます。科学を駆使している点も自分には新鮮でした」
測定などの結果から絶対的なパワーは備えているものの、素早い動きでそれを発揮する瞬発力の面で課題が見えてきた。バイクの回転数を上げるトレーニングや30mダッシュなどを苦手としており、こうした種目では記録に見合うだけの数値を出せていない。しかし見方を変えれば、それは伸びしろでもある。本人もそのことを自覚しており、苦手な能力の向上が記録につながると考え、前向きに練習に励んでいる。「やらなければいけないことを把握でき、その改善がここではすべてできるんです」。IPUの良さを泊はこう表現する。
泊さん 「幸いなことでもあり、少し残念なことでもあるのですが、自分と同学年や近い年齢の先輩に非常に強い選手が集まっていて、今、自分は彼らに追いつくために競技を頑張っています。目標は大学の間に全員を倒して、日本選手権でトップ争いをするレベルまでいくこと。自分は砲丸投が本当に好きで、好きだからこそ誰にも負けたくないと考えているんです。そしていつかは日の丸を付けて世界で戦えるような選手を目指します」
2024年には日本選手権の出場、その翌年には入賞し、最終学年で優勝争いをしたいと青写真を描いている。回転投法の習得、そして日本のトップへの挑戦は始まったばかり。その体躯同様、大きな夢を持って、毎日の練習に取り組んでいる。