【私の指導哲学】硬式野球部 野村 昭彦監督「1つのことに秀でれば、全ての道に通じる」

午後5時のトレーニング開始前。外野フェンスの向こう側で伸び始めた雑草を、野村監督が自らむしり始めます。大学の講義を終えてグラウンドに向かう選手たちは、指揮官の後ろ姿を見て、同じように腰をかがめ、雑草を減らしてから練習に入ります。全国大会の遠征中に他の大学のグラウンドで練習する時にも、自然と落ち葉やゴミに手が伸びます。2022年春に、一見野球と関係ない草むしりやゴミ拾い作業がチームに復活してから、環太平洋大学野球部は春の全日本大学選手権、秋の神宮大会と、4季連続で全国大会に出場しています。

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選手から見た野村監督

山本大地主将(4年=福岡・青豊高出、体育学部) 監督がチームに戻られてから、グラウンドの周りや寮の掃除は、全員が徹底してやるようになりました。特にグラウンドは、(練習試合の)相手チームに『きれいだな』と思ってもらえるようにと考えています。監督が率先して(草むしりなどを)やってくださる姿を見て、『見習わなければならない』と思いますし、「野球だけではなく、生活の部分からしっかりしないと、人としての成長はない」という監督の言葉もその通りです。野球以外の部分も含めた毎日の積み重ねが、結果につながっています。

野村監督のもつポリシーや経歴について

野村監督は、佐伯鶴城高校のエース・主将として、3年夏の甲子園でベスト8まで進出しました。東都6大学リーグの名門・駒澤大学でも主将を務め、在学中に2度のリーグ優勝を経験。広島カープで活躍した兄謙二郎氏と同じプロ入りはかなわぬも、社会人野球の日本石油(現 JX‐ENEOS)でも2度の都市対抗制覇に貢献しています。

野村監督 (大学に)戻ってきて、選手たちに一番言った言葉は「責任感」です。「日本一を目指す」「勝ちたい」と言った以上、負けた時に、指導者のせい、仲間のせい、ピッチャーのせいと、いろんなことに責任転嫁をしてはいけないと思います。結果が出なかった時に、肘が痛いとか、足が痛いとか、後付けで言う選手も信用が置けません。(選手時代に)僕らも日本一を目指す中でやってきましたが、それを『楽しい』と思ったことは一度もありません。『苦しい』とか『責任感から逃げたい』と思うようなことばかりでしたが、最終的には『自分しかいない』『俺しかいない』と、結果を背負う覚悟を持って戦ってきました。

選手引退後は日本石油、駒澤大学のコーチを務め、2013年に本学の硬式野球部監督に就任。2018年の明治神宮大会では、チームを準優勝に導きました。一時退任中には大学日本代表にコーチとして帯同、ハーレム国際大会や日米大学野球で優勝しています。2016年の春には、初めて北海道外に遠征した系列のクラーク記念国際高校野球部を直接指導。キャッチボールの仕方から、中継プレーまでを手取り足取り教え、その夏の甲子園初出場につなげました。駒澤大学時代に、当時コーチだった野村監督の指導を受けたクラーク国際高校の佐々木達也監督は「環太平洋大学での(野村監督の)指導や、オープン戦やシートノックを見せていただいたことが、彼ら(クラーク国際の選手)のエネルギーになった」と振り返っています。 

山本選手 今は練習の時に緊張感があるので、逆に試合では余裕を持ってプレーできています。また練習から視野を広くするよう心がけることで、相手のスキや、チームメイトがどんな心境でプレーしているかがわかるようになったのは、自分にとって大きいですね。また、監督の指導で、常に練習から試合を意識するようになり、『練習でのミスは、必ず試合でも起こる』と思うからこそ、全体練習でミスが出た時には、直後の自主練習を長めにして、その場で克服するように心がけるようにしています。結果的に、『克服できている』という自信が生まれ、緊張感のある練習や公式戦でも、余裕を持ってプレーができるようになっています。

2023年6月の全日本大学選手権では、4度目の出場で待望の大会初勝利を挙げました。続く11月の明治神宮大会でも初戦を突破し、全国ベスト8に駒を進めました。2018年の明治神宮大会決勝進出を超え、日本一の旗を、岡山に持ち帰る日も遠くないはずです。

野村監督 1つのことに秀でれば、全ての道に通じます。野球からそうした社会の原理原則を学ぶことで、将来的に勉強や、職業に生かすこともできます。なぜ打てないのか、なぜエラーをしたのか、次にエラーをしないため、次に打つためにはどうするのかを考えるか、考えないかで、次の大きな差になります。野球で2度同じようにやられてしまうのも、勉強で2度同じ問題を間違えるのも、準備をしないで同じ取引先に2度営業に行くのも同じです。また、1度目で失敗しても、2度目は準備して行って、それでもだめなら3度目に違う準備をすれば、成果を出せる可能性があるのに、今はたった1度の失敗であきらめてしまう人も非常に多いですね。今、調子が悪くても、あきらめずに頑張る選手を僕は使います。そういう選手はヒットやホームランが打てなくても、意外と四死球をもらったり、相手のエラーを誘うような打球を打ったりということがあります。一生懸命やった時には、野球の神様は御褒美をくれるんですね。ですから、頑張ることとか、諦めないこと、継続することが大事だということを、この野球部で勉強してほしいですね。 

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