2023年度全日本学生柔道優勝大会が6月24日、東京・日本武道館で行われ、IPU・環太平洋大学が女子1部5人制で10年ぶり3度目の優勝を飾りました。昨年まで大会3連覇中の東海大学を準決勝で下すと、決勝は国士舘大学を2ー1で破り、歓喜の瞬間を迎えました。大会MVPには、初戦の2回戦から決勝戦まで、5戦すべて一本勝ちでポイントを挙げた石岡来望(いしおか くるみ)選手が選ばれました。
大会MVP 石岡来望(いしおか くるみ)選手
右袖をがっちりつかんだまま、石岡選手が体勢を低くして、相手の体を担ぎ上げました。1−0で迎えた国士舘大学との決勝の副将戦(4人目)の残り1分54秒。背負い投げによる〝一本〟が宣告されたあと、審判団による確認の時間はありましたが、すぐに「それまで!」と、主審が試合終了と石岡選手の勝利を告げました。大将1人を残してスコアが2−0となり、リオデジャネイロ五輪日本代表の梅木真美選手(ALSOK)が1年生で出場した時以来の優勝が確定しました。
1年生で初出場した昨年の大会で、石岡選手は準決勝の東海大学戦で一本負けし、チームも3位でした。「去年は自分が(一本を)取られてチームが負けてしまって、悔しい思いをして、今年は絶対にポイントゲッターになるという気持ちでやってきたので、勝ててよかったです」と、MVPインタビューでマイクを向けられ、最高の笑顔で答えました。今大会は5戦ともすべて違う技でライバルたちから一本を奪い、ポイント(引き分けはポイントなし)を獲得。準決勝ではグランドスラム・パリ大会70㌔級金メダルの角田愛選手(東海大学1年)にも内股で完勝し、1年間の飛躍的な成長ぶりを見せつけました。
影のMVP 鈴木胡桃(すずき くるみ)選手
鈴木選手 自分もポイントゲッターになりたい気持ちはありましたが、1、2回戦の時点で『今日は我慢する日だな』と思いましたので、しっかり自分が(ポイントを取る気持ちを)抑えて、冷静に状況を見ながら戦えば、他のメンバーが(ポイントを)取ってくれるというのを信じて戦い抜きました。
IPU・環太平洋大学柔道部の総監督を務めた故・古賀稔彦氏は生前、「柔道の幅が人間力の幅につながり、人間力の幅を広げることが、柔道の幅を広げることになる」と 選手たちに伝えました。
監督・コーチのコメント
コーチ/片桐夏海
経歴 2009年都道府県対抗全日本女子柔道大会 優勝。2010年全日本柔道学生体重別団体 優勝。2011年全日本柔道実業個人選手権 準優勝。2012,14,15年実業個人選手権 3位。2012年講道館杯 準優勝。2013年ワールドコンバットゲーム・サンクトペテルブルグ 優勝。2013年講道館杯 優勝。2014年全日本体重別選手権大会 準優勝。
片桐コーチ 今年のチームは、元々仲が良いというのもありましたが、本当にその部分(人間力)を磨いている選手たちばかり。お互いの良さを認め合える、思いやりのある選手が多いですね。思いやりがありすぎると(稽古での)甘さにつながったりもしますが、それぞれが勝負をする上で何が必要かということを理解し、本当に(人間力を)高め合うことを、普段から真剣にしてくれているからこそ、優勝できるチームになったと強く感じています
今大会の翌日、4年生は大会に出場しなかったメンバーも含めて13人全員で鍋パーティーを行い、全日本学生柔道体重別団体優勝大会(インカレ)での10年ぶりの2冠に向け、結束をさらに強めました
監督/矢野 智彦
経歴 元東芝柔道部監督。96年講道館杯日本柔道体重別選手権71kg級優勝、97・98年 73kg級優勝。94年ブルガリア国際柔道大会71kg級優勝。99年国民体育大会優勝(東京代表団体)。その他国際大会出場(94年ドイツ・97年フランス/オーストリア/嘉納杯・98・99年ロシア)。
矢野監督 ハプニングがあったとしても、修正してくれる能力は、10年前のチームよりこのチームの方が高いと思います。万が一、Aパターンでダメだった時に、Bパターン、Cパターンと、戦い方を変えて、柔軟に戦ってくれるはずです。例えば、今回でいえば、2回戦で鈴木が(左肘を)ケガをしましたが、準々決勝を1回休んだだけで、気持ちを切り替えて、(相手のポイントゲッターにポイントを与えないという)仕事を果たしました。優勝するまで、冷静に戦ってくれましたね。
次の目標は、(個人戦で、オリンピックや世界選手権につながる)講道館杯(11月)にすることを、全員に伝えました。ハードルは高くなりますが、チーム全員が、個人で講道館杯に出る力を身につけていけば、おのずとインカレ(全日本学生体重別選手権、10月)で勝てるようになると考えています。
女子柔道部の〝実りの秋〟が、また楽しみだ。