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    【体育学部】欧州の育成哲学を学ぶ-中野吉之伴氏 特別講義『安心安全と人間性が拓くスポーツの未来』

    2025年11月26日、体育学科1年生、3限競技スポーツ科学科2年生向けに、スポーツ科学センター客員講師の中野吉之伴氏(ドイツサッカーA級指導者ライセンス、サッカーライター、代表著書:「ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする」)による特別講義を実施しました。この講演において、中野氏はスポーツ環境における「安心安全基本的人権」の確保を最重要視し、日本の指導現場における課題を指摘しました。また、ドイツのスポーツ政策や、ヨーロッパ諸外国などの事例を紹介しながら、選手の主体性・自発性の育成、そしてプロキャリア後のセカンドキャリアを見据えた人間性の成長の必要性を熱く説きました。講義後のIPUサッカー部学生コーチ達との座談会では、現場での課題解決に向けた具体的な提言が交わされました。

    目次

    体育学科1年生対象 テーマ:欧州各国の育成事情

    2限の講義では、20年以上にわたるドイツでの育成指導者としての経験に基づき、日本とヨーロッパの指導現場の違い、特にスポーツにおける「安心安全基本的人権」の確保の遅れについて問題提起しました。氏は、スポーツが人生を豊かにする素晴らしいものである一方、その本質が理解されていないと、かえって人々を苦しめるものになりかねない点を指摘しました。

    ドイツでは、スポーツと学校が切り離されており、部活動は基本的にありません。スポーツは地域との繋がりやコミュニティを形成する重要な要素と見なされ、行政からの手厚いサポートがあります。結果、日本(約3,000~4,000)と比較して圧倒的に多い、約88,000もの総合スポーツクラブが存在します。

    中野氏は、スポーツを行う理由やドイツの指導現場で重要視されるポイントを紹介しました。特に、「安心安全基本的人権」は勝利至上主義よりも絶対に優先されるべき絶対条件であり、これを無視する理論は成立しないと強調しました。

    また中野氏は、自ら課題を分析し改善案を考えて行動する「主体性」、そして内的な動機(好奇心や協調性)を持って行動する「自発性」を育むことが、現代の育成において極めて重要であると解説しました。さらにアイスランドやハンガリーの事例を紹介し、これらの国々が社会問題の解決を目的として、国家プロジェクトとしてスポーツ環境に大規模な投資を行った結果、国民生活の充実や国際競争力の向上につながったことを示しました。

    競技スポーツ科学科2年生対象 テーマ:ドイツのセカンドキャリアのあり方

    3限目の講義では、「セカンドキャリアのあり方」を主要テーマとし、競技スポーツのトップレベルを目指す学生に対して、人間性(人格)の成長の重要性を訴えました。

    プロの世界の厳しさとセカンドキャリアの危機について、プロになれるのは同年代のエリートの中でも極めて少数であり、セカンドキャリアの成功はさらに難しい現実があります。才能や実力があっても、怪我や人間関係の悪化など、競技力以外の要因でキャリアは左右されるため、育成年代(今の段階)から社会人としての自分と向き合うことが必須であると説きました。

    ヨーロッパの育成アカデミーが選手に求める要素は、スキルやフィジカルよりも、人間性に重点が置かれています。具体的には、「知的好奇心」「チャレンジ意欲」「自発的な行動力」「社会性と学業の両立」「苦しい状況でも目的に取り組む意思」などです。

    元日本代表の岡崎慎司選手(現 IPU・環太平洋大学 特任講師「チャレンジリーダー」)は、自分を「下手くそではない」と認識しつつも、常に「このままではやばい」という危機感を持ち、自己分析と成長に真摯に取り組み続けたことでトップキャリアを築いたと紹介しました。「矢印を他者に向けず、常に自分自身(自分の成長)に向けること」が、アスリートがトップレベルで生き残り続けるために不可欠であると強調しました。

    成長の環境と指導者の役割について、指導者やチームは、選手が自分を尊重されていると感じ(リスペクト)、挑戦し、失敗し、そこから発見する機会を提供しなければなりません。日本のスポーツ現場では「みんなはチームのため」に尽くすが、「チームはみんなのため」に尽くす機会が少ない(例:献身的な選手でも試合に出られない)という課題があるとし、試合に出ることは選手全員の権利であるという認識を持つべきだと主張しました。

    サッカー部学生コーチとの座談会

    講演会後の座談会では、サッカー部学生コーチ6名とサッカー部桂監督、中野氏が経験した指導現場の具体的な課題や、日本のサッカー文化に対する提言が交わされました。

    中野氏の考える「良いサッカー」の定義は、「チームが同じ方向を向き、相手を崩すために考えながら、ボールを大切にし、全員が攻撃と守備のイメージを共有している状態」であると説明しました。指導者としての役割は、ゴールの確率を最大化し、ピンチを最小限に抑えること、そしてチームとして目線を揃えることだと述べました。

    日本とヨーロッパのコミュニケーションの違いとして、ヨーロッパではより良いものを作るための「建設的な議論(ディスカッション)」が重視されるが、日本では対立を避け、現状維持を望む傾向がある点を指摘しました。また、ヨーロッパでは、クラブハウスでの飲食やボランティア活動を通じて、選手が地域やクラブへの貢献意識を高く持っている文化があることを紹介しました。

    参加した学生達の意見

    欧州の取り組みは日本にそのまま当てはめるのは難しい部分もありますが、学ぶべき点は非常に多いと感じます。特に「長く続けられるスポーツ環境」を整える姿勢は日本にも必要で、制度が変わればもっと多くの子どもが自分らしくスポーツを楽しめると思いました。

    欧州の育成環境がとても体系的で、選手の未来を長い目で見て支えていることに驚かされました。勝敗よりも選手の成長を大切にし、失敗することを恐れず挑戦できる空気をつくっているという点は、日本のスポーツ現場とは大きく違うと感じ、なぜこれがダメなのか、何をこうしたらいいのかという意見をお互いに言い合える関係性がちゃんとあっていいなと思いました。また、指導者が「教えすぎない」という考え方は、最初は不安にも思えるが、選手の主体性や判断力を育てるうえで非常に有効だと納得しました。全体を通して、日本のスポーツ指導にも取り入れられる部分が多く、育成とは単に技術を教えるだけでなく、選手の人生を支える営みなのだと改めて感じました。

    プロのアスリートは自分に自信がある反面、常に危機感を持っていて、上には上がいると思い、練習を怠らない、常に成長し続けられる人達だと学びました。また、才能がある人や能力がある人でも成長を続けることが出来ない選手はチャンスを掴むことが出来ないと知りました。これらの学んだことを活かすために、日々の練習を自主性や主体性を持って取り組み、毎日少しづつでも成長し続けられる選手になれるように行動していきたいと思います。特に印象的な言葉だったのは失敗しない方法を学ぶのではなく、失敗した時にどのようにまた立ち上がって走り出せるかが大切という言葉です。この言葉の通りに、失敗を恐れずにチャレンジし、成長していきたいと思います。

    私はプロになるためにこの競技スポーツ科学科に来ました。常に競技のスキルを上げる為に、上げることがプロになる近道だと思っていました。しかし、スキルだけでは引退後のセカンドキャリアは上手くいかないことを知りました。プロを育成する場でも人間として、成長出来ている人がプロでも活躍し、セカンドキャリアでも成功しているということを知りました。私は今のこと時間を競技スキルを伸ばす時間だけに当てるのではなく、1人の社会人として、向き合って今の時期に学ぶべき、身に付ける力を付けていきたいと思います。またチャンスは誰にでも来ると思っていましたが、やるべきことをしている人にしかチャンスは来ないという言葉を胸にこれからを過ごしていきます。

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