【現代経営学科】「チャンスは貯金できない」―金谷勉氏に学ぶ地域産業再生のマーケティング
2026年4月22日、現代経営学科講義「マーケティング総論」では、有限会社セメントプロデュースデザイン代表の金谷勉氏にご講演いただきました。講義は、通常の授業とは異なる緊張感に包まれました。

講義では、豊富な実例をもとにお話しいただき、学生たちはSTP分析※などの理論が、現実の市場でどのように機能しているのかを具体的に学びました。これまで学んできた知識が、実際の意思決定と結びつく瞬間に、教室の空気は自然と引き締まり、高い集中が生まれていました。
※フィリップ・コトラー氏が提唱した、市場を細分化(S)し、ターゲットを絞り(T)、差別化ポジションを確立(P)するマーケティングの基本フレームワーク
講義の冒頭、金谷氏は「デザイン=見た目を整えるもの」という固定観念に問いを投げかけられました。金谷氏が提示したのは、デザインを「技術」「意匠」「販路」を結びつける設計行為として捉える視点です。そこでは、既存の資源に新たな意味を与え、価値を再構築することが重要になります。歴史的な素材が、新たな文脈のもとで商品として生まれ変わる事例に触れ、学生たちは「価値は発見されるだけでなく、再定義されるものでもある」という視点を実感していきました。
地域産業の再生については、「定数」と「変数」という枠組みが示されました。変えられない条件(定数)を前提にしながら、素材・用途・ターゲット・販路といった要素(変数)を見直すことで、新たな価値が生まれます。廃棄されていた資源が商品へと転換された事例や、市場の文脈を変えることで新たな需要を創出した事例は、視点の転換が事業の可能性を大きく広げることを示していました。「デザインは生き残るための生存戦略である」という言葉は、こうした具体的な実践と結びつくことで、学生たちに強い実感を伴って伝わっていました。

講義の終盤、金谷氏は学生に対して印象的な言葉を残しました。「チャンスは貯金できない」この一言は、機会をつかむためには、日々の準備と行動が不可欠であることを端的に示しています。また、「学校歴ではなく学問歴が問われる」という指摘は、大学で何を学び、どのように積み重ねてきたかが重要であることを強く印象づけました。
さらに金谷氏は、IPUの学生について「体育会系のにおいがする」と評価しました。これは、主体的に動こうとする姿勢や、困難な状況にも前向きに取り組むエネルギーに対する肯定的な評価です。
その言葉に、学生たちは自らの強みを再認識し、将来への手応えを感じている様子でした。

講義終了後、教壇の前には長い列ができました。日本人学生だけでなく、留学生も含め、多くの学生が金谷氏に直接質問を投げかけていました。紹介された製品に実際に触れながら議論を深める姿からは、学びが単なる知識の理解にとどまらず、自らの関心や問題意識へとつながっていることが伝わってきました。教室で得た知識が、現実社会と結びつく。その実感を伴う学びは、学生一人ひとりの中に確かな変化を生み出していました。
本講義は、IPUが掲げる実学教育の価値を、具体的なかたちで示す機会となりました。
【参考】金谷勉氏プロフィール

金谷勉氏は、1971年大阪府生まれ。京都精華大学人文学部を卒業後、企画制作会社および広告制作会社を経て、1999年にデザイン会社「セメントプロデュースデザイン」を設立しました。 同社では、グラフィックデザインやプロモーション、商品開発のプロデュースを手がけるとともに、2011年からは全国の町工場や職人と連携した「地域産業協業活動」を展開しています。地域の中小企業と協働し、商品開発から販路設計までを一貫して支援する活動は高く評価され、テレビ番組『カンブリア宮殿』『ガイアの夜明け』などでも紹介されています。現在は各地で講演や教育活動にも携わり、大学での指導や自治体との連携を通じて、地域産業の再生に貢献しています。





