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    3. 有給休暇とは?法律の仕組みから取得方法まで解説

    有給休暇とは?法律の仕組みから取得方法まで解説

    有給休暇は、労働基準法が使用者に付与を義務づけた労働者の権利です。

    申請理由を告げる義務はなく、会社は原則として拒否できません。

    しかし、付与日数・発生条件・申請手続きを正確に知らないまま働いている方は少なくありません。

    厚生労働省の令和7年就労条件総合調査によると、2024年の有給取得率は66.9%と過去最高を更新しましたが、3人に1人以上は付与された有給を使い切れていない状況が続いています。

    パートタイム・派遣社員を含む全ての労働者に認められた権利の内容を、社会保険労務士の視点で体系的に解説します。

    年5日取得義務・賃金計算・繰り越しと時効・退職前の消化方法まで、現場で役立つ知識をこの1記事で確認できます。

    この記事を読めばわかること
    • 有給休暇の法律上の定義と使用者に付与義務が課される根拠
    • 勤続年数・雇用形態別の付与日数と有給が発生する2つの条件
    • 取得理由を告げなくてよい法的根拠と断られたときの具体的な対処法
    • 賃金計算の3つの算定方法・繰り越しルール・消滅時効の仕組み
    • 厚生労働省データで読み解く業種別有給取得率と入社前の職場見極め方

    有給休暇とは何か、法律が定める定義と基礎知識

    年次有給休暇とは、労働基準法第39条によって使用者に付与が義務づけられた制度であり、所定労働日に休んでも賃金が支払われる労働者の権利です。

    会社が任意で設ける福利厚生ではなく、法律が定めた権利として保障されているという点が出発点になります。

    厚生労働省の令和7年就労条件総合調査によると、2024年における労働者1人あたりの有給休暇取得率は66.9%と、1984年以降で過去最高を更新しました。

    しかし、政府が掲げる目標値70%にはいまだ届いておらず、制度の正確な内容を把握することが、権利を確実に行使するうえでの第一歩となります。

    有給休暇の正式名称と労働基準法上の位置づけ

    有給休暇の正式名称は年次有給休暇といいます。

    日常会話では有給や有休と略されますが、法律上は年次有給休暇という名称が使われています。

    労働基準法第39条第1項には、使用者は雇入れの日から起算して6ヶ月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して有給休暇を与えなければならないと定められています。

    条文の主語は使用者であり、付与は会社の自由意思ではなく法的な義務です。

    付与義務を怠った場合は、労働基準法第120条により30万円以下の罰金の対象になります。

    罰則の存在は、有給休暇が単なる制度上の建前ではなく、使用者が必ず履行しなければならない義務であることを示しています。

    付与義務と並んで理解しておきたいのが、労働者側の時季指定権です。

    時季指定権とは、有給休暇をいつ取得するかを自分で決める権利のことです。

    申請の際に取得理由を会社側に告げる義務はなく、会社は原則として申請を拒否できません。

    認められている例外は、申請された日に休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げると判断される場合のみです。

    有給休暇の権利自体を消滅させたり、取得件数に上限を設けたりすることは認められていません。

    有給休暇に関する法律上の主なルールをまとめると次のとおりです。

    項目内容
    根拠法令労働基準法第39条
    付与義務者使用者(会社・事業主)
    付与の要件雇入れ日から6ヶ月継続勤務 かつ 全労働日の8割以上出勤
    初回付与日数10日(フルタイム労働者)
    最大付与日数20日(勤続6年6ヶ月以上)
    時効付与日から2年(労働基準法第115条)
    付与義務違反の罰則30万円以下の罰金(労働基準法第120条)

    付与日数の上限が20日に設定されている点にも注意が必要です。

    勤続年数が増えても付与日数は20日を超えないため、毎年計画的に消化することが残日数を管理するうえで重要になります。

    厚生労働省の令和7年就労条件総合調査では、2024年に企業が付与した有給休暇の1人平均は18.1日でしたが、実際に取得された日数は12.1日にとどまっています。

    付与と取得の差が6日にのぼる状況は、権利の認知度だけでなく、取得しやすい環境づくりが課題になっていることを示しています。

    有給休暇と欠勤・公休の違いを整理する

    有給休暇・欠勤・公休は、いずれも会社に出勤しない日という点では共通しますが、法的な性質と賃金の扱いはまったく異なります。

    3種類を区別する最大のポイントは、賃金が支払われるかどうかです。

    有給休暇は労働義務のある日に申請して取得する休暇であり、取得した日の賃金は支払われます。

    欠勤は労働義務を果たさない状態に当たるため、原則として賃金が控除されます。

    公休はそもそも就業規則上に定められた労働義務のない日であり、賃金の問題が生じません。

    3つの違いを整理すると次のとおりです。

    種類労働義務の有無賃金の扱い申請の要否
    有給休暇あり(申請により免除)支払われる必要(理由の告知義務なし)
    欠勤あり(不履行)原則支払われないなし
    公休(所定休日)なし(もともと労働義務のない日)支払われない不要

    公休は年間休日として就業規則や雇用契約書に明示されており、会社が定めた完全な休みです。

    有給休暇は公休とは別に法律が付与を義務づけており、両者は重複しません。

    土曜日や日曜日など所定休日に当たる日に有給休暇を使うことは原則できず、有給休暇は所定労働日に申請するものです。

    病気で急に休んだ日の扱いも、判断に迷いやすい場面の一つです。

    体調不良による突発的な休みを欠勤扱いにするか有給休暇として申請するかは、労働者が選ぶことができます。

    就業規則に後付け申請の可否が定められているケースもあるため、在籍する会社のルールをあらかじめ確認しておくとよいでしょう。

    有給残日数がある場合は、病欠を欠勤のままにせず有給休暇として申請することで、賃金の控除を防ぐことができます。

    有給残日数が残っているにもかかわらず欠勤扱いを重ねてしまうケースは少なくありません。

    付与日から2年で時効を迎えるため、使わないまま消えてしまう前に、定期的に残日数を確認する習慣をつけておくことをおすすめします。

    残日数は給与明細や社内の勤怠管理システムで確認できます。

    有給休暇は何日もらえるか、勤続年数別の付与日数

    有給休暇の付与日数は、勤続年数と週所定労働日数の2軸によって労働基準法第39条が定めており、入社から6ヶ月後に最初の付与が行われます。

    フルタイムで働く場合、最初の付与日数は10日です。

    勤続年数が伸びるにつれて段階的に増え、勤続6年6ヶ月以上で年間最大20日に達します。

    雇用形態と勤続期間を照合することで、自分がいつ何日もらえるかを正確に把握できます。

    勤続年数ごとの付与日数早見表

    フルタイムの対象となるのは、週所定労働日数が5日以上または週所定労働時間が30時間以上の労働者です。

    正社員・契約社員・アルバイト・パートを問わず、要件を満たせば同じ日数が付与されます。

    勤続年数付与日数
    6ヶ月10日
    1年6ヶ月11日
    2年6ヶ月12日
    3年6ヶ月14日
    4年6ヶ月16日
    5年6ヶ月18日
    6年6ヶ月以上20日(上限)

    勤続2年6ヶ月から3年6ヶ月にかけて付与日数が2日増加する点は見落としがちです。

    それまでの1日ずつの増加から幅が広がるため、勤続3年前後の労働者は付与日数が増えていることを確認するとよいでしょう。

    付与日数の上限は20日です。

    勤続6年6ヶ月以上になっても日数は増えません。

    使い切れなかった有給は翌年に繰り越せますが、繰り越しができるのは付与日から2年以内に限られます。

    繰り越し分と当年分を合算すると最大40日を保有できる計算になりますが、2年を超えた分は時効で消滅します。

    厚生労働省の令和7年就労条件総合調査によると、2024年に企業が付与した有給休暇は労働者1人平均18.1日でした。

    フルタイムの付与テーブルでは勤続5年6ヶ月以上(18日)に相当する水準で、多くの労働者がある程度の勤続年数を重ねている実態が反映されています。

    一方、取得日数の平均は12.1日にとどまり、付与日数との差が6日あります。

    付与された有給を使い切れていない層が依然として多いことを示しています。

    パートタイム・アルバイトへの比例付与の仕組み

    週所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満のパートタイム・アルバイトには、労働日数に比例した有給休暇が付与されます。

    フルタイムと同じ20日が付与されるのではなく、週の勤務日数に応じた日数が法定されています。

    日数に差はありますが、要件を満たせば必ず付与されるという点はフルタイムと変わりありません。

    週に数日だけ働くパートタイム労働者にも、有給休暇を取得する権利があります。

    週所定労働日数別の付与日数は次のとおりです。

    週所定労働日数年間所定労働日数の目安6ヶ月1年6ヶ月2年6ヶ月3年6ヶ月4年6ヶ月5年6ヶ月6年6ヶ月以上
    4日169〜216日7日8日9日10日12日13日15日
    3日121〜168日5日6日6日8日9日10日11日
    2日73〜120日3日4日4日5日6日6日7日
    1日48〜72日1日2日2日2日3日3日3日

    週4日勤務の場合、勤続6ヶ月で7日の有給が付与されます。

    フルタイムの10日より少ないですが、週4日のペースで7日を消化するには約10日間の連続休暇に相当します。

    日数の絶対値だけでなく、自分の勤務ペースに対する比率で捉えると、実際には十分な休暇日数が保障されています。

    判定で注意が必要なのは、週所定労働日数と年間所定労働日数の両方が基準として設定されている点です。

    週の勤務日数が一定しない変形労働時間制や、シフト制の職場では、年間の所定労働日数を使って判定します。

    雇用契約書や就業規則に年間所定労働日数が明記されているかどうかを入職時に確認しておくことをおすすめします。

    派遣社員・契約社員の有給休暇の扱い

    派遣社員の有給休暇は、派遣先企業ではなく派遣元企業(派遣会社)との雇用関係に基づいて付与されます。

    有給休暇に関する義務と権利はすべて派遣会社が担います。

    有給休暇の申請先も派遣会社であり、付与日数の計算に使う勤続年数も派遣会社への登録日から起算します。

    派遣先が変わっても、同じ派遣会社に登録し続けている限り勤続年数は継続されます。

    残日数の繰り越しルールも派遣会社によって異なるため、登録時に就業規則を確認しておくことが大切です。

    厚生労働省の令和4年派遣労働者実態調査によると、有給休暇があると回答した派遣社員は93.1%に達しています。

    制度の適用は広く普及していますが、付与日数や残日数の管理は派遣会社ごとに異なります。

    有給取得を希望する際は、まず担当コーディネーターに残日数と申請手続きを確認するとよいでしょう。

    契約社員については、雇用形態の違いにかかわらず、同じ条件を満たせばフルタイム労働者と同じ日数が付与されます。

    1年契約で更新を繰り返している場合でも、空白期間なく更新が続いていれば通算した勤続年数で付与日数が決まります。

    契約と契約の間に空白期間が生じた場合は、勤続が途切れたと判断される可能性があります。

    実務上は1ヶ月程度が目安として扱われることが多く、それを超える空白がある場合には改めて会社に確認しておくとよいでしょう。

    雇用形態を問わず有給休暇の権利は保障されていますが、勤続年数の算定方法は雇用契約の形式によって異なります。

    入職時に雇用契約書と就業規則で確認しておくことが、あとからトラブルを防ぐうえで重要です。

    有給休暇はいつから取れるか、発生する条件を確認する

    有給休暇は、雇入れ日から起算して6ヶ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に発生します。

    2つの要件のどちらか一方だけでは足りません。

    継続勤務と出勤率の両方を同時に満たした時点で、使用者に付与義務が生じます。

    発生タイミングを正確に把握していないと、既に有給が発生しているにもかかわらず申請しないまま時効を迎えてしまうケースもあります。

    入社6ヶ月後に発生する仕組みと出勤率8割の条件

    入社から6ヶ月後に有給休暇が発生する根拠は労働基準法第39条第1項です。

    条文には、使用者は雇入れ日から起算して6ヶ月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して有給休暇を与えなければならないと定められています。

    6ヶ月という期間と8割という出勤率は法定の基準であり、会社が独自に付与時期を遅らせたり、要件を引き上げたりすることはできません。

    有給休暇が発生する2つの要件を整理すると次のとおりです。

    要件内容
    継続勤務期間雇入れ日から起算して6ヶ月以上
    出勤率全労働日の8割以上

    たとえば4月1日に入社した場合、最初の有給休暇は10月1日に発生します。

    2つの要件を同時に満たした日をもって付与義務が生じ、翌日以降に取得できます。

    出勤率8割という条件の意味を正確に理解しておく必要があります。

    出勤率は、出勤日数を全労働日数で割った値を100倍した数値です。

    全労働日とは就業規則上の所定労働日のことで、所定休日(土日・祝日・会社指定休日)を除いた日数になります。

    6ヶ月間の全労働日が120日の場合、8割以上とは96日以上の出勤を意味します。

    欠勤が25日以上になると出勤率が8割を下回り、有給休暇は発生しません。

    出勤率の計算で注意が必要なのは、実際には出勤していない日でも法律上は出勤したものとみなす期間が存在する点です。

    労働基準法第39条第10項は、次の3つの休業期間を出勤扱いとすることを義務づけています。

    • 業務上の負傷・疾病による療養のための休業期間
    • 育児休業・介護休業の期間
    • 産前産後休業の期間

    産休・育休中は実際に出勤していないものの、出勤率の計算では出勤日としてカウントしなければなりません。

    産休・育休取得者の出勤率が低下したことを理由に有給休暇を付与しないことは違法です。

    また年次有給休暇を取得した日も出勤日として扱われます。

    一方で、全労働日の分母から除外される日もあります。

    不可抗力による休業や、使用者側の経営・管理上の障害による休業日はそもそも労働義務がない日として算定対象外になります。

    ストライキ等の争議行為により労務が提供されなかった日も同様に除外されます。

    除外される日は欠勤扱いにはなりません。

    試用期間中に有給休暇は発生するか

    試用期間中であっても、有給休暇の発生要件については一般の在籍期間と同じ扱いになります。

    労働基準法第39条第1項の起算点は雇入れ日です。

    試用期間を除外する旨の規定は条文にないため、試用期間の開始日がそのまま起算日になります。

    たとえば3ヶ月の試用期間を経て本採用となる場合、有給休暇は雇入れ日から通算して6ヶ月後に発生します。

    試用期間が終わってから改めて6ヶ月数え直す必要はありません。

    試用期間中の有給取得を就業規則で禁止することも違法です。

    付与要件を満たした以上、試用期間であるかどうかを問わず使用者は有給休暇を与えなければなりません。

    法的に連続した雇用関係が維持されていれば試用期間開始日が起算日になりますが、実態として雇用が一度終了して再雇用に近い形になっている場合、新たな契約日から起算されるとみなされることがあります。

    試用期間と有給休暇の関係をまとめると次のとおりです。

    状況有給休暇の扱い
    試用期間中(雇入れから6ヶ月未満)発生しない(継続勤務6ヶ月の要件未達)
    試用期間中(雇入れから6ヶ月以上経過)発生する(出勤率8割以上の場合)
    試用期間終了後に同一契約が継続試用期間開始日から通算して発生
    試用期間終了後に新たな雇用契約を締結新契約開始日から改めて6ヶ月の起算が必要な場合あり
    試用期間中に就業規則で有給取得を禁止違法(要件充足後は取得可)

    入職時には就業規則を確認し、試用期間の定義と本採用への切り替え方法が明記されているかどうかを確認しておくとよいでしょう。

    有給発生の起算日がどの時点かを把握しておくことが、申請を確実に行うための基本です。

    有給休暇の申請方法と取得時に知っておくべきこと

    有給休暇の申請は、取得理由を告げる義務がなく、使用者は原則として労働者が指定した時季に付与しなければなりません。

    申請の形式は会社ごとに異なりますが、一般的には所定の申請書または社内の勤怠管理システムを通じて行います。

    直属の上司または人事担当者が承認者となるケースが多く、承認後に有給休暇として処理されます。

    申請のフォーマットや提出先は会社の就業規則に定められているため、入職時に確認しておくとよいでしょう。

    取得理由を伝えなくてよい法的根拠

    有給休暇の申請において、取得理由を告げる法的義務はありません。

    根拠は労働基準法第39条第5項です。

    条文には、使用者は労働者が請求する時季に有給休暇を与えなければならないと定められており、申請の条件として理由の告知を求める規定はありません。

    私用と伝えるだけで十分であり、個人的な理由の詳細を開示する義務はありません。

    では、会社が理由を確認することは違法かというと、一概にそうとはいえません。

    業務の引き継ぎや人員調整を目的として理由を尋ねること自体は禁じられておらず、会社側にも業務運営上の合理性があります。

    問題になるのは、理由の内容を根拠に取得を拒否したり、プレッシャーをかけたりする行為です。

    理由の確認と、理由に基づく拒否・不利益扱いは区別して捉える必要があります。

    実務上は、家族の都合や個人的な用事と伝えるだけで十分です。

    繁忙期や引き継ぎが難しい時期を避ける旨を伝えると会社側の理解を得やすくなることもありますが、あくまで任意の配慮であって法的な義務ではありません。

    申請内容を理由に降格・減給・解雇などの不利益な扱いをすることは、労働基準法第136条が禁止しています。

    理由を尋ねられたとしても、取得権そのものへの影響はありません。

    当日申請は会社に認めてもらえるか

    当日申請が認められるかどうかは、就業規則の定めと個別の事情によります。

    労働基準法第39条第5項は、有給休暇の申請期限を具体的に定めていません。

    法律上は前日でも当日でも申請自体は可能です。

    最高裁判所昭和57年3月18日の判決では、就業規則で申請を2日前までに行うよう定めることに合理性があると判断されており、多くの会社がこの判決を踏まえて前日から1週間前までの事前申請を義務としています。

    就業規則に定められた期限より後に申請した場合、会社は時季変更権を行使できる余地が生まれます。

    時季変更権とは、労働者が希望した日に業務運営上の支障がある場合に、使用者が他の日への変更を求める権利のことです。

    当日であっても業務への支障が軽微な場合や、急病・家族の緊急事態といったやむを得ない事情がある場合には、会社が承認するケースも多くあります。

    また、当日に時季変更権を行使しても別の日への実質的な変更が機能しないという特性があり、単に欠勤扱いとするだけでは有給休暇の権利を否定したことには直結しないという考え方も実務では示されています。

    急病や緊急事態で当日の連絡が必要な場合は、伝言でなく責任者に直接伝えることが実務上のトラブルを防ぐポイントです。

    連絡先と連絡方法は就業規則か事前の職場確認で把握しておくとよいでしょう。

    当日申請に関する会社のルールと法律上の考え方を整理すると次のとおりです。

    状況取り扱いの考え方
    就業規則に事前申請の定めがある場合当日申請は時季変更権の行使対象になり得る
    急病・家族の緊急事態による当日連絡事情説明により承認されるケースが多い
    就業規則に申請期限の定めがない場合当日申請でも原則として付与義務が生じる
    当日申請を一律に欠勤扱いにする場合有給休暇の権利を否定したとみなされる可能性がある

    会社に断られたときの具体的な対処法

    会社が有給休暇の申請を拒否できるのは、取得が事業の正常な運営を妨げる場合に限られます。

    労働基準法第39条第5項のただし書が定める時季変更権の要件がこれに当たります。

    単なる忙しさや一時的な人員不足は必ずしも要件を満たさず、恒常的に人員が不足している職場では時季変更権を行使できないとした裁判例も出ています。

    会社が断れる条件は法律上に限定されており、嫌だからという理由や印象による拒否は違法です。

    断られた場合の対処は、段階を踏んで進めるのが実務上の基本です。

    まず断られた理由を記録に残る形で確認します。

    口頭の場合はメモを残し、できればメールや文書で回答を求めるとよいでしょう。

    次に就業規則の有給取得に関する条文を確認し、社内ルールの範囲内かどうかを検討します。

    直属の上司との解決が難しい場合は人事部門へエスカレーションします。

    社内での解決が見込めない場合は行政機関への相談へ進みます。

    都道府県労働局および労働基準監督署は、有給休暇の取得妨害について無料で相談を受け付けており、匿名での相談も可能です。

    労働局にはあっせん制度があり、申請から解決まで費用がかかりません。

    対処ステップ主な内容費用
    社内での再申請・人事相談上司・人事部門へのエスカレーションなし
    労働基準監督署への相談違法行為の申告・改善指導の要請無料
    都道府県労働局あっせん労使間の調整・解決手続き無料
    労働審判裁判所での簡易な調停申立費用が必要
    民事訴訟法的強制執行を伴う最終的解決弁護士費用が必要

    有給取得後に降格・減給・解雇などの不利益な扱いを受けた場合も同様に、労働基準法第136条違反として申告対象になります。

    相談の記録は後の手続きで証拠として機能するため、断られた経緯を日時とともに記録しておくことが不当な扱いに備える実務的な対策です。

    年5日取得義務とは、2019年改正で会社に課された新しいルール

    年5日取得義務とは、2019年4月施行の改正労働基準法によって、年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対して使用者が年5日の取得を確実に行わせなければならないと定めた制度です。

    義務を負うのは使用者であり、労働者に取得を強制するものではありません。

    労働者が自ら申請して5日以上取得している場合には、使用者の時季指定は不要になります。

    職場への遠慮や申請のしにくさを背景に取得率が伸び悩んでいた現状を受け、会社側が積極的に取得を促す仕組みとして制度化されました。

    使用者が年5日取得させる義務の内容と違反した場合の罰則

    使用者が年5日の取得を確実に行わせなければならない対象者は、年次有給休暇が年10日以上付与される全ての労働者です。

    正社員・契約社員・パートタイム・管理監督者を問わず、10日以上の付与を受けていれば対象になります。

    取得させる期限は、有給休暇を付与した日(基準日)から1年以内です。

    4月1日に入社して10月1日に10日の有給休暇が付与された場合、翌年9月30日までの1年間で5日取得させなければなりません。

    使用者が取得を義務づけられているのはあくまで5日であり、残り5日分については労働者の自主取得にゆだねることができます。

    5日に満たない場合に限り、使用者が時季を指定して取得させる必要があります。

    5日のカウントには、労働者が自主的に申請して取得した日数と、計画的付与で取得させた日数が含まれます。

    取得の形態5日からの差し引き
    労働者が自ら申請して取得した日差し引き可
    計画的付与により取得させた日差し引き可
    使用者の時季指定により取得させた日差し引き可(義務の対象日そのもの)
    繰り越し分の取得差し引き可

    使用者は時季を指定するにあたり、労働者の意見を聴取し、聴取した意見を尊重するよう努めなければなりません。

    一方的に取得日を決定することは制度の趣旨に反します。

    2019年の改正と同時に、使用者には年次有給休暇管理簿の作成・保存が義務づけられています。

    管理簿には労働者ごとに取得時季・日数・基準日を記録し、3年間保存しなければなりません。

    記録がないと義務履行の証明ができないため、実務上も欠かせない管理です。

    義務に違反した場合の罰則は、労働者1人につき30万円以下の罰金です。

    5日取得させなかった労働者が複数いる場合、1人につき1罪として計上されるため、対象者の数に比例してリスクが高まります。

    計画付与制度と時間単位取得の仕組み

    計画付与制度とは、会社と労働者の過半数代表者または労働組合が労使協定を締結することで、有給休暇の取得時季を計画的に割り振れる制度です。

    適用できるのは、付与日数のうち5日を超える部分だけです。

    たとえば10日付与されている場合、計画付与できるのは最大5日分です。

    残りの5日は労働者の自主取得または使用者の時季指定のために留保する必要があります。

    厚生労働省の令和7年就労条件総合調査によると、計画的付与制度を導入している企業の割合は40.8%でした。

    夏季休暇や年末年始休暇にあわせて計画付与する形が多く、一斉に取得日を設定することで職場全体の取得率を底上げする効果があります。

    計画付与の方法は3種類あります。

    • 一斉付与: 事業場全体または部門全体で同じ日に付与する
    • 個人別付与: 労働者ごとに個別に取得日を設定する
    • 班別付与: 交代制の職場などで班ごとに分けて取得日を設定する

    計画付与の取得日を変更する場合は、就業規則の改定だけでは足りません。

    労使協定を再締結する必要があります。

    これは計画付与が協定で定められた権利であるためです。

    産前産後休業や育児休業の期間中は計画付与の対象外となります。

    時間単位年休は、労使協定の締結と就業規則への規定により、有給休暇を時間単位で取得できる制度です。

    2010年4月の法改正で導入されました。

    育児や介護、通院、子どもの行事など、半日または1日単位では取得しにくい場面に対応するための制度です。

    現行制度では、年5日分を上限として時間単位での取得が認められています。

    所定労働時間が8時間の場合、1日分は8時間分に換算され、最大で年40時間分を時間単位で使えます。

    1時間単位での取得が原則であり、30分単位など分単位での取得は認められていません。

    時間単位年休の取得上限の拡大について、政府は2025年度中に検討結果を出す方向で議論を進めていましたが、2025年12月に通常国会への改正法案提出が見送られたとの報道があります。

    2026年4月時点では上限5日の現行制度が継続しています。

    今後の法改正の動向は厚生労働省の情報を随時確認することをおすすめします。

    制度必要な手続き適用の上限対象日数
    計画的付与労使協定の締結付与日数の5日超分5日超の部分のみ
    時間単位年休労使協定の締結 + 就業規則への規定年5日分(現行)付与日数全体から最大5日

    有給休暇の賃金計算、取得日の給与はいくらになるか

    有給休暇を取得した日の賃金は、労働基準法第39条第9項が定める3つの算定方法のいずれかで計算されます。

    どの方法を採用するかは会社が就業規則で定め、採用した方法はすべての労働者に統一して適用しなければなりません。

    取得日の給与が通常の出勤日と異なる金額になる場合、会社の就業規則で採用されている算定方法が影響しています。

    自分の会社がどの方法を採用しているかを事前に把握しておくことが大切です。

    3つの算定方法の選び方と優先順位

    労働基準法第39条第9項が認める3つの算定方法は、通常の賃金・平均賃金・標準報酬日額です。

    方法1の通常の賃金は、有給取得日もその日に所定労働時間を勤務した場合と同額の賃金を支払う方法です。

    月給制の場合は欠勤控除をせずに通常の月給を支払うことになり、計算が最もシンプルです。

    追加の算定作業が不要なため、日本企業の多くがこの方法を採用しています。

    方法2の平均賃金は、労働基準法第12条に定める算定式で求めた金額を有給賃金とする方法です。

    有給取得日直前3ヶ月の賃金総額をその期間の暦日数で割った金額が原則です。

    日給制・時給制・歩合給など日ごとに賃金が変動する労働者に適しているとされています。

    方法3の標準報酬日額は、健康保険の標準報酬月額を30で割った金額を有給賃金とする方法です。

    就業規則への記載だけでなく、労使協定の締結も必要であり、他の2つと異なり協定がなければ選択できません。

    3つの方法の特徴を整理すると次のとおりです。

    方法計算の基準必要な手続き主な特徴
    通常の賃金所定労働時間を勤務した場合の賃金就業規則への規定最もシンプルで採用企業が多い
    平均賃金直前3ヶ月の賃金総額 ÷ 暦日数就業規則への規定変動賃金がある場合に対応しやすい
    標準報酬日額健康保険の標準報酬月額 ÷ 30就業規則への規定 + 労使協定計算は容易だが協定締結が前提

    算定方法は、会社が同一事業場の全労働者に統一して適用しなければなりません。

    ある労働者には通常の賃金、別の労働者には平均賃金、という個別の使い分けは認められていません。

    就業規則に明記された1つの方法を全員に適用するルールです。

    就業規則に算定方法の記載がない場合は、通常の賃金を支払うことが実務上の原則的な取り扱いになります。

    在籍する会社の就業規則で算定方法を確認しておくことをおすすめします。

    採用している方法を問わず、算出した賃金が各都道府県の最低賃金を下回ってはなりません。

    最低賃金は毎年10月前後に改定されるため、計算結果が下回っていないかを定期的に確認することが必要です。

    時給制・パートタイムの場合の計算手順

    時給制またはパートタイム労働者の有給賃金は、就業規則で定めた算定方法に従って計算します。

    通常の賃金方式を採用している会社では、有給1日分の賃金は時給と所定労働時間数を掛け合わせた金額になります。

    時給1,200円で所定労働時間が5時間のシフトに入っている日に有給を取得した場合、1日分の有給賃金は6,000円です。

    所定労働時間が日によって異なるシフト制の場合は、有給を取得したその日に設定されていた所定労働時間数を使います。

    平均賃金方式を採用している会社では、計算は少し複雑になります。

    原則の金額と最低保障額を比較して、高い方を1日の有給賃金とします。

    原則の平均賃金は、直前3ヶ月の賃金総額を暦日数で割って求めます。

    最低保障額は、直前3ヶ月の賃金総額を実労働日数で割り、60%を乗じた金額です。

    直前3ヶ月の賃金総額が234,000円、暦日数が91日、実労働日数が39日のケースで計算すると、原則の平均賃金は約2,571円となります。

    最低保障額は234,000 ÷ 39 × 0.6 = 3,600円です。

    高い方の3,600円が1日の有給賃金になります。

    同じ労働条件であっても、算定方法が通常の賃金方式か平均賃金方式かによって、受け取る金額に大きな差が生じることがわかります。

    シフト制で勤務日数が変動するパートタイム労働者が平均賃金方式の会社に在籍している場合、繁忙期後に有給を取得すると直前3ヶ月の賃金が高く反映されて有利になります。

    反対に閑散期後の取得では有給賃金が低くなります。

    算定方法による変動リスクを理解したうえで、有給取得のタイミングを検討することも一つの方法です。

    雇用形態通常の賃金方式での計算例平均賃金方式との比較
    月給制(正社員)月給をそのまま支払い(欠勤控除なし)通常の賃金方式が一般的に高い
    日給制日給をそのまま支払い出勤日数が少ない月は最低保障が機能
    時給制(パート)時給 × 所定労働時間数通常の賃金方式の方が明確で高い場合が多い
    シフト制(変動時間)有給取得日のシフト時間 × 時給直前3ヶ月の勤務状況で変動

    有給休暇の繰り越しと消滅時効、残日数を無駄にしない管理方法

    有給休暇は付与日から2年間有効であり、年度内に使い切れなかった分は翌年に繰り越せます。

    2年という有効期間は労働基準法第115条が定めた法定の最低基準です。

    会社が就業規則で2年より短く設定することはできません。

    残日数を把握して計画的に取得することが、権利を無駄なく行使するための基本的な姿勢になります。

    有給休暇が消えるまでの期間と繰り越しのルール

    有給休暇の請求権は、付与日を起算日として2年間で時効により消滅します。

    2020年の民法改正によって賃金請求権の時効が3年(最終的には5年)に延長されましたが、有給休暇の時効は2年のまま据え置かれています。

    有給休暇は賃金そのものではなく休暇を取得する権利であり、2020年改正後も時効は変わっていません。

    付与年度に使い切れなかった有給休暇は、翌年度に全日数を繰り越すことができます。

    繰り越された有給休暇は付与日から数えて2年目まで使用できます。

    3年目に突入した時点で法的には消滅します。

    具体的な仕組みを確認します。

    4月1日入社で10月1日に10日の有給が付与された場合、付与日から1年後の翌10月1日に新たな有給が付与されます。

    前年の残日数は翌年の付与日に繰り越され、合算した状態で管理されます。

    繰り越された前年分は、翌年の付与日から1年以内(付与日から数えて2年以内)に消化しなければ消滅します。

    フルタイム労働者の最大保有日数を整理すると次のとおりです。

    状況保有できる最大日数
    当年付与分のみ最大20日
    前年繰り越し分 + 当年付与分最大40日

    最大40日という数字は、前年20日を全て繰り越した状態に当年20日が加わった場合の上限です。

    勤続6年6ヶ月以上のフルタイム労働者が毎年一切取得しなかった場合に到達する水準です。

    就業規則で年度内に消化しない有給を消滅させると定めることは違法です。

    労働基準法第115条の時効規定は強行法規であり、就業規則でこれより短い期間を定めても無効になります。

    会社が独自に2年より長い期間を設定することは可能です。

    残日数の確認方法は会社ごとに異なります。

    給与明細に記載されているケース、社内の勤怠管理システムで確認できるケース、人事部門に問い合わせるケースがあります。

    半年に一度は残日数を確認し、消滅が近い古い有給から優先して取得する計画を立てるとよいでしょう。

    退職時に残った有給休暇はどうなるか

    退職時に残っている有給休暇は、退職前に消化することが原則です。

    退職が確定した後、残日数の有給休暇を退職前に申請することは労働者の権利として認められています。

    退職日が確定している場合、会社は時季変更権を行使できません。

    退職後には他の日へ変更させることが物理的に不可能なためです。

    この点は裁判例でも確認されており、退職前の有給消化申請を一方的に否定することは認められていません。

    退職前に有給を消化する手順は次のとおりです。

    退職の意思を伝える際に有給残日数を確認し、残日数分を退職日までに申請します。

    残日数が多い場合は、退職日を残日数分だけ後ろにずらして調整するか、引き継ぎ期間と有給消化期間を両立させる形で退職日を設定します。

    注意が必要なのは、引き継ぎと有給消化が重なる場合です。

    会社は引き継ぎへの参加を求めることができますが、有給取得日に出勤させることは原則として認められていません。

    引き継ぎ業務のスケジュールを考慮したうえで、有給消化期間と引き継ぎ期間を明確に分けておくことがトラブルを防ぐ実務上のポイントです。

    退職後に有給休暇を申請することはできません。

    雇用関係が終了した日以降は有給休暇の権利そのものが消滅するためです。

    退職日を超えた有給日数は法的に消えてしまうため、退職前に確実に消化できるスケジュールを立てることが重要です。

    状況有給休暇の扱い
    退職確定後の退職前申請認められる(時季変更権行使不可)
    退職日に合わせた消化スケジュール退職日を残日数分調整することが可能
    退職後の有給申請認められない(雇用関係消滅のため)
    退職時に消化しきれなかった残日数法的には消滅(会社が任意で買い取る場合あり)

    有給休暇の買い取りが認められる条件

    有給休暇の買い取りは、原則として違法です。

    厚生労働省は、有給休暇の本来の趣旨が休むことにあり、金銭で代替することは制度の目的に反するとの見解を公表しています。

    在職中に残日数を金銭で精算する慣行は、法律上の有給休暇制度と両立しません。

    退職時に残った有給休暇の買い取りは認められています。

    退職後は権利の行使自体が不可能になるため、会社が任意で金銭を支払うことは差し支えないとされています。

    法定日数を超えた部分の買い取りも認められています。

    労働基準法が定める付与日数の上限は勤続6年6ヶ月以上で20日です。

    会社が法定を超えて独自に付与した日数(たとえば25日付与している場合の超過5日分)については、買い取りを定めることが可能です。

    時効によって消滅した有給休暇の買い取りも認められています。

    2年の時効を経過して消滅した有給は労働基準法の関知外になるため、会社が自主的に金銭で精算することは違法ではありません。

    3つの例外をまとめると次のとおりです。

    状況買い取りの可否
    在職中の残日数(通常時)不可(原則違法)
    退職時の残日数可(会社の任意)
    法定日数を超えた部分可(就業規則で定めれば対応可)
    時効消滅した日数可(法定外として任意精算が可能)

    退職時の買い取りは会社の義務ではないため、退職前の消化を優先するのが現実的な対応です。

    在職中に取得できなかった残日数を退職後に金銭精算することを会社に強制させることはできない点は理解しておく必要があります。

    有給取得率でわかる、職場の労務体質の見分け方

    有給休暇の取得率は業種・企業規模・職場によって大きな格差があり、入社前にデータで確認することで職場の労務体質をある程度判断する材料になります。

    取得率は単なる数値ではありません。

    労働者が権利を自由に行使できる環境かどうか、管理職が業務改善に取り組んでいるかどうか、そして人員配置が適正かどうかを間接的に示す指標として機能します。

    採用面接では職場の良い面しか見えにくいため、公的データと事前調査の組み合わせが実態把握に役立ちます。

    厚生労働省データで見る業種別・規模別の有給取得率格差

    厚生労働省の令和7年就労条件総合調査によると、2024年の有給休暇取得率は全体平均で66.9%でした。

    政府が令和10年までの達成目標として掲げる70%を目前にしながら、業種によっては全国平均から20ポイント近い乖離が生じています。

    産業別にみると、電気・ガス・熱供給・水道業が75.2%と最も高く、次いで製造業・情報通信業などが全国平均を上回る傾向にあります。

    反対に宿泊業・飲食サービス業が50.7%と最も低く、人手不足が慢性的に続く業種では権利の行使が難しい実態が数字に表れています。

    主な産業の取得率を整理すると次のとおりです。

    産業2024年取得率の傾向
    電気・ガス・熱供給・水道業75.2%(全産業最高)
    製造業全国平均を上回る傾向
    情報通信業全国平均を上回る傾向
    金融業・保険業全国平均付近
    建設業全国平均付近
    医療・福祉全国平均を下回る傾向
    宿泊業・飲食サービス業50.7%(全産業最低)

    産業別格差の背景には、業務の標準化のしやすさ・代替要員の確保可能性・繁閑の平準化度合いなど、構造的な要因があります。

    エッセンシャルワーカーが多く人員に余裕がない業種ほど、有給申請が職場の空気に抑制されやすい傾向が続いています。

    企業規模別には、大規模企業ほど取得率が高く、中小企業ほど低くなる傾向が確認されています。

    厚生労働省の審議会資料においても、企業規模が小さいほど有給取得率が低くなる傾向があり、中小企業への支援が継続的な課題と指摘されています。

    規模が小さいほど人員の代替が難しく、一人が休むことの業務への影響が大きいためです。

    全国平均66.9%という数値は9年連続の増加を示していますが、言い換えると依然として3人に1人以上が付与された有給休暇を全量取得できていない状況です。

    取得率が50%台の業種では、付与日数の半分以上が実際には使われていないことになります。

    入社前に有給の取得しやすさを確認する3つの方法

    有給休暇の取りやすさは、求人票の記載だけでは判断できません。

    実態を確認するために有効な方法が3つあります。

    1つ目は、厚生労働省が公開する女性の活躍推進企業データベースを使う方法です。

    厚生労働省のウェブサイトで公開されている同データベースには、301人以上の企業が法律に基づいて報告した有給休暇取得率・育児休業取得率・残業時間などの数値が掲載されています。

    企業名で検索することで、法定開示データを直接確認できます。

    数値は自己申告ですが、一定のルールに基づいて公開されているため、求人票の抽象的な表現よりも実態に近い情報です。

    また、東京証券取引所に上場している企業であれば、有価証券報告書や統合報告書に人的資本情報として有給取得率・平均取得日数が開示されているケースが増えています。

    2023年3月期以降、有価証券報告書への人的資本情報の記載が義務化されており、上場企業については公開情報として有給取得実績を確認できます。

    2つ目は、採用情報・企業サイトの確認です。

    有給取得率を積極的に公開している企業は、有給取得率を採用上の訴求ポイントとして認識しています。

    具体的な数値が開示されているかどうかを確認するだけでも、取得促進に積極的かどうかを読み取ることができます。

    3つ目は、面接での直接確認です。

    有給休暇の取得について面接で質問することは、労働条件の確認として正当な問い合わせであり、権利の範囲内です。

    年次有給休暇の平均取得日数を具体的に尋ねる、あるいは取得しやすい環境整備についてどのような取り組みをしているかを確認するといった質問を投げかけることで、担当者の反応や回答の具体性から職場の実態を推測できます。

    回答が曖昧であったり、取れる日は取れます、といった程度の答えにとどまる場合は、制度が機能していない可能性を示唆していることがあります。

    年5日取得義務が法律で定められた2019年以降、会社側は有給取得の管理に積極的に関わることが求められており、具体的な数値を答えられる担当者がいる企業は管理体制が整っていると判断できます。

    3つの方法をまとめると次のとおりです。

    確認方法参照先入手できる情報
    厚生労働省データベースの検索女性の活躍推進企業データベース法定開示の有給取得率・取得日数
    有価証券報告書・統合報告書上場企業のIRサイト人的資本情報(有給取得率等)
    面接での直接確認採用面接担当者の反応・職場の運用実態

    有給休暇に関するよくある質問

    有給休暇の取得や運用に関して、現場でよく直面する疑問を3つ取り上げます。

    Q有給休暇は病欠に使えるか
    A

    有給休暇は取得理由を問わない権利であるため、病気による欠勤の日に充てることができます。

    有給休暇の申請に理由を告げる義務がないことは労働基準法第39条第5項が根拠です。

    病気・ケガ・私用・旅行を問わず、労働者が指定した日に使用できます。

    病欠で休んだ日を有給に振り替えることで、賃金の控除を防ぐことができます。

    注意が必要なのは、申請のタイミングです。

    欠勤が確定した当日に有給申請するかどうかは、就業規則のルールに左右されます。

    事前申請を義務とする就業規則を設けている会社では、当日申請を時季変更権行使の対象にできる余地があります。

    急病など緊急のやむを得ない事情については、当日の申請を承認している会社が多いのが実態です。

    病欠後の後付け申請(欠勤翌日以降に有給に切り替える申請)が認められるかどうかも就業規則の定めによります。

    事後申請を認める規定がある場合は可能であり、規定がない場合は会社側に判断が委ねられます。

    在籍する会社のルールを事前に把握しておくことが、賃金の控除を防ぐうえで重要です。

    有給休暇と病欠の違いを整理すると次のとおりです。

    病欠を欠勤扱いにして有給を温存するか、有給を充てて賃金を確保するかは労働者が選ぶことができます。

    残日数と給与への影響を考慮したうえで判断するとよいでしょう。

    Q会社から有給休暇の取得日を指定されたら拒否できるか
    A

    会社から有給取得日を指定される場合には2つのケースがあり、それぞれ対応が異なります。

    1つ目は、年5日取得義務に基づく使用者の時季指定です。

    2019年4月以降、年10日以上付与される労働者について、使用者は基準日から1年以内に5日分の時季を指定して取得させる義務を負っています。

    労働者が自主的に5日以上取得している場合は時季指定は不要ですが、取得が5日に満たない場合、会社から日付を指定されることがあります。

    法律上の義務に基づく指定であるため、原則として受け入れる必要があります。

    指定にあたって使用者は労働者の意見を聴取し、尊重するよう努める義務があります。

    希望する日程を伝えることは可能です。

    2つ目は、計画的付与制度による時季指定です。

    労使協定に基づいて会社が有給の取得日を計画的に割り振る制度であり、協定が締結されている場合は労働者も原則として従う必要があります。

    計画付与日の変更は労使協定の再締結が必要であり、会社が一方的に変更することは認められていません。

    これら2つの法的根拠のある指定とは別に、会社が一方的に有給取得日を指定しようとする場合は、使用者に時季変更権しか与えられていないことを踏まえると、法的根拠がありません。

    時季変更権は希望した日を別の日に変えることを求める権利であり、取得自体を指示したり一方的に日付を押しつけたりする権限は会社にはありません。

    会社から有給指定を受けたときの判断軸を整理すると次のとおりです。

    Q退職直前にまとめて有給休暇を消化することはできるか
    A

    退職が確定した後、残日数の有給休暇を退職前にまとめて消化することは法律上認められています。

    退職前の有給消化は労働者の権利です。

    退職日が確定している場合、会社は時季変更権を行使できません。

    退職後には他の日への変更が物理的に不可能なためです。

    残日数分の有給申請を退職前に行うことで、全量を消化したうえで退職することができます。

    実務上の手順としては、退職意思を伝える際に有給残日数を確認し、残日数に基づいて退職日を設定するのが合理的です。

    残日数が20日ある場合、通常の引き継ぎ期間に加えて20日分を後ろに延ばした日付を退職日にすることで、引き継ぎ完了後に有給消化期間を確保できます。

    会社から引き継ぎへの参加を求められる場合もありますが、有給取得日中は原則として出勤義務がありません。

    引き継ぎ期間と有給消化期間を分けて調整するか、引き継ぎを優先して完了させてから有給消化に入る形が実務上のトラブルを防ぐうえで効果的です。

    退職前の有給消化に関してよくある誤解を整理すると次のとおりです。

    参考資料