調査・実験研究の深層を学ぶ-南風原朝和先生講演「因果関係の理解」
12月3日(火)、『因果関係の理解-研究につなげるために-』というテーマで、教職員全員を対象にしたFD研修会が開催されました。昨年に引き続き、IPU次世代教育学部特命教授であり、東京大学名誉教授でもある南風原朝和先生をお招きし、ご講演をいただきました。実証的な研究、例えば、トレーニングの効果や教材の選択の効果など、「こうすればこうなる」と捉えられる因果関係をより深く考えさせられるものでした。
講演の前半では調査・観察研究について、後半では実際に処遇を施す実験ないし実践研究について触れられました。その中で、「因果関係の解明は容易ではなく、疑い(脅威)を減らしていくことが大事」、「脅威が完全に除去できなくても研究を行う価値がある」、「単独の研究では断定的な結論が得られなくても、研究を積み重ねる中で、結果の再現性や、異なる方法を用いた研究の結果の照合などを経て、因果関係に接近していくことができる」といった示唆をいただきました。
終盤には、調査観察データを用いた因果推論のための新しい統計法である傾向スコア分析について紹介されました。質疑応答では、「因果の強さを測るものはあるのか」、「実験者の期待効果の観点から授業者が教育効果をみるときの関わり方をどうすればよいか」、「研究をするに当たってデータが先の方がよいのか理論が先の方がよいのか」といった質問にお答えいただきました。
研究デザインを考える上で、さまざまな脅威を考慮する大切さ、研究を積み重ねる意味、俯瞰的な視点を持つ重要性など、貴重な学びの場となりました。